
賃貸の省エネ性能表示は必要か?法律のポイントをわかりやすく解説
賃貸物件を選ぶ時、省エネ性能表示や関連する法律について、十分に理解できている方はまだ多くありません。
しかし光熱費の高騰や環境配慮への関心の高まりにより、今後はエネルギー消費性能や断熱性能といった情報をどう読み解くかが、賃貸選びや賃貸経営において重要なポイントになります。
このコラムでは、建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示の制度内容を整理しつつ、賃貸の場面でどこまでが法律上の義務で、どこからが任意の工夫なのかを分かりやすく解説します。
さらに、賃貸オーナーや管理会社が実務で押さえるべき流れや、今後見込まれる制度拡充の方向性にも触れ、具体的な判断に役立つ視点をお伝えします。
まずは全体像から確認していきましょう。
賃貸での省エネ性能表示制度の全体像
建築物省エネ法は、建築物のエネルギー消費量を削減し、脱炭素社会の実現を目指すために整備された法律です。
その一環として、建築物の販売・賃貸時に、省エネ性能を分かりやすく示す制度が導入されました。
特に、借り手が住宅や事務所を選ぶ際に、省エネ性能を比較しやすくすることが重視されています。
こうした仕組みにより、省エネ性能の高い賃貸物件の供給を促すことが期待されています。
省エネ性能表示制度は、建築物省エネ法の中で「販売・賃貸を行う事業者による省エネ性能の情報提供」を促す役割を担っています。
具体的には、広告などにおいて、省エネ性能ラベルを用いてエネルギー消費性能等を多段階評価で表示することが求められています。
この表示は、借り手が光熱費や快適性を含めた総合的な判断をしやすくすることを目的としています。
同時に、事業者側にも省エネ性能を高める動機付けを与える制度として位置付けられています。
賃貸に関係する建築物としては、賃貸住宅や賃貸オフィスなど、販売・賃貸を事業として行う建築物が対象とされています。
賃貸を反復継続的に行うオーナーや、サブリース事業者なども「賃貸を行う事業者」とみなされ、省エネ性能表示の努力義務の範囲に含まれます。
新築の賃貸建築物については、省エネ性能ラベルによる表示が特に重視されており、既存建築物についてもガイドラインに沿った表示が推奨されています。
このように、賃貸市場全体で省エネ性能を「見える化」することにより、環境負荷の低減と入居者の利便性向上が図られています。
| 制度の観点 | 賃貸との関係 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 建築物省エネ法の目的 | 賃貸建築物の省エネ性能向上 | エネルギー消費量の削減 |
| 省エネ性能表示の役割 | 賃貸物件選択時の情報提供 | 省エネ性能の「見える化」 |
| 事業者への影響 | 賃貸事業者の表示努力義務 | 高性能物件供給の促進 |
賃貸物件の省エネ性能表示の法律上の義務範囲
建築物省エネ法第27条では、建築物の販売又は賃貸を行う事業者に対し、対象建築物のエネルギー消費性能を表示するよう努めなければならないと定められています。
この「表示努力義務」は、法的な強制力を伴う義務ではなく、事業者に対して省エネ性能を積極的に示すことを求める性格のものです。
また、同条第2項では、表示すべき事項や表示方法などを国土交通大臣が告示で定める仕組みとなっており、制度全体が法令と告示で構成されています。
このため、賃貸物件の広告や募集の場面でも、告示に沿ったかたちで省エネ性能を示すことが期待されています。
表示努力義務の対象となるのは、建築物の販売又は賃貸を反復継続して行う事業者であり、規模の大小は問いません。
国土交通省のガイドラインでは、住宅・非住宅を問わず、賃貸アパートや賃貸マンション、賃貸用事務所ビルなど、広く事業として賃貸される建築物が対象に含まれると整理されています。
また、令和6年4月以降に建築確認申請が行われた建築物を事業として販売・賃貸する場合には、省エネ性能表示の努力義務の対象になることが明確に示されています。
このように、一般的な賃貸住宅や賃貸オフィスも、事業として運営されているかどうかが判断の大きなポイントになります。
建築物省エネ法第28条では、販売・賃貸事業者が告示に従って省エネ性能を表示していない場合、国土交通大臣が勧告や命令を行うことができるとされています。
さらに、命令に従わない場合には、その旨が公表される可能性があり、法的リスクだけでなく、社会的な信用低下という影響も無視できません。
国土交通省の説明資料では、当面は社会的影響が大きい場合を中心に勧告等を行う運用とされていますが、制度の周知が進むほど、表示状況への社会的な目も厳しくなると考えられます。
賃貸事業者にとっては、努力義務だからと軽視するのではなく、法令遵守と信頼確保の観点から、早期に対応しておくことが重要です。
| 項目 | 内容 | 賃貸事業者への影響 |
|---|---|---|
| 表示努力義務の位置付け | 建築物省エネ法第27条に基づく法的義務 | 省エネ性能表示への継続的な取組が必要 |
| 対象となる事業者 | 建築物を反復継続して販売又は賃貸する事業者 | 賃貸アパート等のオーナーや管理主体も含まれる |
| 勧告・命令と公表 | 告示に沿わない場合に国土交通大臣が勧告等 | 法令違反の指摘と社会的信用低下のリスク |
賃貸で表示すべき省エネ性能の具体的な項目とラベル
賃貸の省エネ性能表示では、まず「エネルギー消費性能」と「断熱性能」が中心的な評価項目になります。
国土交通省の告示では、新築の販売・賃貸時に、一次エネルギー消費量に基づく省エネ性能を多段階で示すことが定められています。
さらに、住宅については外皮の断熱性能も多段階で評価し、建築物省エネ法における基準との関係が分かるように整理されています。
これらの数値や等級を正しく把握しておくことが、賃貸の募集時にわかりやすい情報提供を行ううえでの出発点になります。
エネルギー消費性能の多段階評価は、原則として建物全体の一次エネルギー消費量を基準とし、国の基準値に対する性能の高さを★などで表す仕組みです。
国土交通省の資料では、エネルギー消費性能は6段階評価とされ、中間の段階においてZEH水準を位置付ける考え方が示されています。
一方、住宅の断熱性能は7段階評価とされ、外皮性能が高いほど上位の段階として表示されるよう設計されています。
このように、エネルギー消費性能と断熱性能を別々に評価しつつ、両者を併記することで、省エネ性能の全体像を伝えやすくしています。
省エネ性能ラベルは、こうした評価結果を分かりやすくまとめた図柄として、販売・賃貸時の広告やパンフレットなどに表示することが求められます。
国土交通省の制度概要によると、ラベルにはエネルギー消費性能と断熱性能の多段階評価に加えて、評価年月日を記載することが必要とされています。
そのうえで、任意項目として再生可能エネルギー利用設備の有無や、住宅の目安光熱費、第三者評価マークなどを追加表示できることが示されています。
これらを組み合わせることで、賃貸物件の広告において、省エネ性能を一目で比較しやすい情報として提示することが可能になります。
| 区分 | 必ず表示する項目 | 任意で追加できる項目 |
|---|---|---|
| エネルギー消費性能 | 6段階の多段階評価 | 第三者評価マーク |
| 断熱性能(住宅) | 7段階の多段階評価 | 省エネ改修の内容 |
| 付随情報 | 評価年月日の記載 | 再エネ設備・目安光熱費 |
賃貸オーナー・管理会社が押さえるべき実務ポイント
まず、省エネ性能表示を実務に落とし込む際の全体の流れを整理しておくことが重要です。
はじめに、省エネ基準に沿った設計・仕様の確認を行い、必要に応じて設計者や専門事業者からエネルギー消費性能の評価結果を取得します。
次に、国土交通省告示に準拠したラベル様式を用い、エネルギー消費性能や断熱性能などの評価結果をラベルに反映します。
最後に、そのラベルを賃貸募集の広告やパンフレット、自社ホームページの物件紹介ページに掲載し、借り手が比較しやすい形で分かりやすく表示することが求められます。
次に、既存賃貸物件と新築賃貸物件とで、省エネ性能表示の考え方が異なる点を押さえておく必要があります。
建築物省エネ法に基づく制度では、原則として新築の販売・賃貸を事業として行う場合に、省エネ性能表示を行うことが努力義務とされており、既存建築物については把握が困難な場合にまで告示どおりの表示を求めない取扱いが示されています。
その一方で、既存賃貸物件であっても、断熱改修や設備更新を行った際に評価を取得し、ラベルを用いて省エネ性能を示せば、入居希望者に対して設備更新の内容や快適性向上を分かりやすく伝えられます。
このため、既存物件では優先順位を付けて評価を進め、新築物件では計画段階から評価取得とラベル作成を賃貸募集の準備スケジュールに組み込むことが実務上のポイントとなります。
さらに、今後の制度拡充や義務化強化の方向性を踏まえた賃貸経営の視点も欠かせません。
建築物省エネ法の改正により、省エネ性能表示のルールは段階的に整備されてきており、国土交通省は告示やガイドラインを随時改訂しながら、対象建築物や評価方法の明確化を進めています。
また、検討会のとりまとめでは、省エネ性能の高い建築物が選ばれやすい市場環境を整備することが掲げられており、今後も省エネ基準の引上げや既存建築物への対応強化などが議論される可能性があります。
そのため、賃貸オーナーや管理会社としては、早期に省エネ性能表示を実務に組み込み、省エネ改修や設備更新の計画と併せて、将来の制度変更にも対応しやすい賃貸経営方針を検討しておくことが望ましいです。
| 実務ポイント | 新築賃貸物件の対応 | 既存賃貸物件の対応 |
|---|---|---|
| 評価取得の進め方 | 設計段階から評価前提で計画 | 改修や更新の節目に評価検討 |
| ラベル作成と表示 | 募集開始前にラベル準備 | 表示可能な物件から段階導入 |
| 将来制度への備え | 最新ガイドラインの継続確認 | 省エネ改修計画と一体検討 |
まとめ
賃貸の省エネ性能表示制度は、建築物省エネ法に基づき、販売・賃貸事業者へ省エネ情報の「表示努力義務」を課す仕組みです。
エネルギー消費性能や断熱性能、多段階ラベルなどを見える化することで、入居者は光熱費の目安を把握しやすくなり、事業者側も省エネ性の高い賃貸を正当に評価してもらえるようになります。
既存物件か新築かで対応は変わるため、早めに評価取得から広告表示までの流れを整えることが重要です。
自社物件での省エネ性能表示の進め方や、今後の義務化強化を見据えた賃貸経営の見直しは、ぜひ当社にご相談ください。